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鈴木吉彦医師の主張(上記論文:要点のみ)

医学会の権威と医師の自由診療を巡る議論が、日本の医療の根幹を問うている。

糖尿病治療薬のWegovyやZepboundを保険適用外で処方する医師に対し、学会退会という厳罰を科す動きがあるという。しかし、この措置は医療の本質を見誤っているのではないか。

少子高齢化の波は医療財政を圧迫し、民間病院の経営は悪化の一途をたどる。保険診療の報酬だけでは、もはや十分な収益を確保できない。医師たちの労働環境は厳しさを増し、志気の低下も著しい。そんな中、自由診療は医師が専門性を発揮し、患者に多様な選択肢を提供できる貴重な場である。

専門医資格の剥奪という威嚇は、優秀な糖尿病専門医を学会から、ひいては医療現場から追い出すことになりかねない。医師には、患者一人ひとりの状況に応じて最善の医療を提供する責務がある。学会の一律的な規制は、その裁量権を侵害し、医療の質を低下させる。

皮肉なことに、「適応外処方」を安易に行うような、また、薬の効能や副作用を熟知しない美容外科医らが処方を続ける一方で、真の専門家である糖尿病専門医が締め出される。チルゼパチドが糖尿病発症を95%以上防ぐという事実を前に、予防という学会の使命はどこへ行ったのか。

 

「Outstanding」という言葉を、欧米では「優れた」と解し、日本では「はみ出し者」と捉える。この認識の差が、日本医療の閉塞感を象徴している。学会は今こそ、医療制度の現実、専門医の責務、そして何より患者の利益を天秤にかけ、建設的な道を探るべきである。

自由診療を巡る今回の議論は、日本医療の未来を占う試金石となろう

糖尿病学会からの回答(要点のみ)

学会と現場の間に横たわる溝は、時に対話によって埋められることがある。

日本糖尿病学会からの回答は、一つの誤解を解くとともに、新たな課題を浮き彫りにした。

 

まず明確になったのは、保険適用外処方を理由とした学会員の退会措置など検討されていないという事実である。危惧は杞憂であった。

しかし、問題の本質は別のところにある。2型糖尿病で肥満症を持つ患者には、最適使用推進ガイドラインに縛られることなく、オゼンピックやマンジャロの使用が可能だという。一方で、糖尿病を持たない肥満症患者へのオゼンピックやマンジャロの使用については、学会は推奨できないとする

この線引きは医学的には正当だろう。だが、現実はもっと複雑である。美容目的での安易な処方、特にオンライン診療のみでの投薬は、確かに危険極まりない。副作用の発見が遅れ、重大な健康被害を招きかねない。

学会も認識している通り、軽度肥満でも心血管・代謝リスクの高い人々は存在する。こうした人々への保険適用拡大や、ガイドラインの見直しは急務である。企業との連携による研究推進は、その第一歩となろう。

医療の世界では、原則と現実の間で常に葛藤が生じる。学会の慎重な姿勢は理解できるが、同時に現場の医師たちが直面する患者のニーズも無視できない。重要なのは、安全性を担保しつつ、真に医療を必要とする人々に適切な治療の道を開くことである。

対話は始まった。この議論が、日本の肥満症治療の新たな地平を切り開く契機となることを期待したい

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